めぐる前に

 私が「金澤上口刑法場探し」を書く際に大阪の古書店から取り寄せた本の函には最初の持ち主が筆で書いた文字が残されています。

 

 「平成元年七月十八 小村久信氏 持参された」

 

 本の題は「ふるさと三馬」。金沢市編入50周年を記念して編まれた地誌です。小村久信氏はこの本の著者の一人です。

 小村氏が誰にこの本を手渡したのか、なぜ大阪の古書店に渡ったのか、その経緯は分かりませんが、今金沢に住む私の手元にあることは何かの縁なのかもしれません。

 

 この本から十二年後に出版された地誌に「三馬公民館 五十年の歩み」があります。やはり著者の一人に小村久信氏の名があり、三馬公民館館長となっています。本は非売品ですが、金沢市内の図書館で閲覧することができます

 

 その巻末に「三馬地区新旧史跡マップ」があり、なんとそこには仕置場あととして泉野刑場の位置が記載されていました。

 私はこの本の存在を知らず、独自調査の末に「泉村ニ之部百六十一ノ甲」の地番に辿り着くわけですが、まさにその場所が仕置場として地図で紹介されていたのです。

 

 史跡マップを作るにあたり新たに聞き取り調査などを行ったのでしょうか、刑場の場所が泉本町に特定されています。平成十一年に発行された「金澤・野町の四〇〇年」からの指摘も影響したのでしょう。

 金澤上口刑法場探し上の巻 再び郷土史へ(泉編)参照

 

 いずれにせよ「金澤上口刑法場探し」の内容に裏付けが得られたものと思います。

 

平成三十年六月