光る虫

 私たちが知っているミノムシは枯枝などを集めて巣をつくってぶら下がる蛾の幼虫のことですが、ここで語られるみの虫は小雨の降る夜に妖しい光を明滅させて雨具にくっ付く不思議な虫です。

 

 これが妖霊や陰火ではないとしたら、その正体はいったい何なのでしょうか。

 

 インターネットで光る虫を検索すると「蓑火」と呼ばれる妖しい光の話が滋賀県にも伝わっているようです。やはり雨の夜に雨具の蓑に取り付いて払っても光が増えてしまうというもの。全国各地に似た話があるようです。 

 

 日本で光る虫はホタルの仲間ぐらいらしいのですが、それでも40種類ほどいるそうで、私が思うに蓑虫の正体は陸生ホタルの幼虫ではないかと考えています。 

 

蓑火[今昔百鬼拾遺 中の巻」鳥山石燕
蓑火[今昔百鬼拾遺 中の巻」鳥山石燕

 

 しかし、人々がこの光る蓑虫を陰火や死者の霊として恐れたのは無理もないことかもしれません。

 

 何故ならこの「鍋の弦」は藩政初期の処刑場であり、また川下の牢屋が置かれた場所でした。

 

 また、犀川対岸の柳原には処刑された罪人の遺体を使って刀の切れ味をためす「胴切場」もありました。

 

 当時の人は雨の夜に雨具にまとわりつく淡い光を死者の無念の思いに重ねていたのかもしれません。

 

左図 

蓑火[今昔百鬼拾遺 中の巻」鳥山石燕