電子版 『翻刻 御刑法帳 上』


 金沢市立玉川図書館近世史料館所蔵の『寛政度之分 御刑法帳』は藩政時代に加賀藩公事場奉行が刑罰を決める際の判例集として編纂した書物です。これを活字に翻刻したものとしては1964年に金沢大学法政学会から出版された『金沢法学 第10巻 第2号』の中に法制史学者の服藤弘司氏の「御刑法帳 加賀藩法制資料(1)」が掲載されています。(注)

 この『金沢法学 第10巻 第2号』を所蔵する図書館は北陸では金沢市立玉川図書館のみであり、一般の方々がその内容に触れる機会はほとんど無かったのではないでしょうか。

 

 古文書の翻刻という作業は多大な手間と労力を必要とするものですが、それにも関わらす創作的ではないことから著作物とはされず、作者に権利は発生しません。

 『寛政度之分 御刑法帳』を翻刻した服藤氏はおそらく学術発展の一助となればとの思いで資料を公開したのではないでしょうか。

  その流れでいえば翻刻された古文書の電子化という作業にも何ら権利は発生しないのですが、これが誰かの興味を満たす一助となれば幸いです。 

 

 注、服藤弘司『刑事法と民事法』(創文社、1983年)にも「御刑法帳」の翻刻が収められているようですが確かめていません。

凡例

 (原文との相違点)

1、用字は原則として原文のままであるが、ただし「他国江」は「他国え」、「往来ニ而」は「往来ニて」、「様子茂」は「様子も」、「相手者」は「相手は」、「女与」は「女と」のごとく書き直し、漢字の一部は正字に書き改め、変体仮名も普通の仮名に変更。

2、敬語のうえの欠字および改行は続けて記載。

3、朱書きの部分を「 」で囲む。

4、適当に句点を打つとともに、地名・人名・職名などが二箇所以上続いている場合には中黒丸を打つ。

5、犯罪別に見出しの番号を付す。

 (電子化に当たっての翻刻文からの変更点)

6、捨て仮名(小書き添え仮名)で表示できない文字は通常の大きさの文字を使用、「ニ」など。